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アジア最大規模のグローバルカンファレンス「WebX2024」参加レポート
はじめに
こんにちは。次世代デジタル基盤開発事業部の鈴木康男です。エンジニア・PMとして、Web3.0に関わるプロジェクトを担当しております。
2024年8月28日、東京で開催された「WebX2024」およびサイドイベントである「WaveHack Global WebX FINAL DEMODAY」に参加しました。
昨年に続いての参加でしたが、今年は業界の急速な変化を肌で感じる機会となりましたので、レポートとしてまとめます。
「WebX2024」とは
日本最大の暗号資産・Web3メディアCoinPostが企画運営する、アジア最大規模のグローバルカンファレンスです。このイベントは、東京のザ・プリンスパークタワー東京で開催され、暗号資産、ブロックチェーン、その他のWeb3技術に関連する企業が参加しており、日本国内外からの主要プレイヤー、起業家、投資家、政府関係者、メディア関係者、一般来場者が一堂に会するアジア最大規模のグローバルカンファレンスです。
■WebX2024 Webサイト:https://webx-asia.com/ja/?lang=JA
カンファレンスの全体的な印象
大企業の存在感が増大
昨年と比べて最も印象的だったのは、国内大企業の存在感の増大です。ブース展示を見て回ると、SBIグループやNTT Digitalなど、大手企業のプレゼンスが際立っていました。
大阪万博関連のウォレットや周辺のNFT関連サービスのデモやキャンペーンが行なわれており、Web3.0技術の社会実装が現実味を帯びてきたことを実感させられました。
印象に残ったセッションと所感
カンファレンス本編と同時並行で開催されていた「WaveHack Global WebX FINAL DEMODAY」を主に聴講しましたので、行なわれたセッションの概要と所感を記載します。
WaveHack Globalは、今年約4カ月間に渡って開催されたアクセラレーションプログラムの集大成となるイベントであり、トップビルダーのデモピッチ、協賛プロジェクトのキーノート、そしてゲストスピーカー陣によるトークセッションが行なわれました。
日本のWeb3スタートアップのポテンシャル
概要
このセッションは、業界をリードするVCや企業の代表者によるパネルディスカッションで、日本のWeb3.0市場の現状と将来性について深い洞察が共有されました。日本のIPやエンターテインメント分野を活かしたプロジェクトが注目されていると語られました。
一方で、海外と比較して日本ではプロジェクト間の人材流動性が低いという課題も指摘されました。これは、日本のWeb3エコシステムの発展にとって重要な課題の一つかもしれません。
グローバルなプロジェクトへの投資や案件を見る機会が多い登壇者の立場からは、海外のプロジェクトではコミュニティの熱量が高い印象があると述べられました。これは、日本のスタートアップがグローバル展開を目指す際に参考にすべき点だと感じました。
興味深かったのは、規制環境の整備が進んでおり、新たなビジネスチャンスになる可能性があるという点です。規制の明確化により大企業の参入が促進される可能性を指摘されました。大企業の参入はスタートアップにとっては競争の激化を意味する一方で、パートナーシップの機会も増える可能性があります。
所感
このセッションを通じて、日本のWeb3.0スタートアップの潜在力と課題が鮮明に浮かび上がりました。IPやコンテンツの強み、高い技術力、そして整備されつつある規制環境は、日本のスタートアップにとって大きなアドバンテージとなり得ます。
一方で、グローバル展開の遅れやコミュニティ形成の課題は、早急に取り組むべき点だと感じました。特に、海外プロジェクトのコミュニティの熱量の高さは、日本のスタートアップも見習うべき点だと思います。また、大手企業の参入が加速する中で、スタートアップがどのようにユニークな価値を提供し続けるかが、今後の成功の鍵を握ると感じました。AIやブロックチェーン、ゲームなどの領域で、大手にはない機動性と革新性を活かしたサービス開発が求められます。
グローバルトッププロジェクトの日本市場への視点
概要
このセッションでは、グローバルプロジェクトから見た日本市場の評価と、日本企業のグローバル展開に関する洞察が共有されました。
まず、グローバルプロジェクトから見た日本市場は、解像度が低く分かりづらい、という印象が語られました。日本でWeb3.0分野のユーザー数や暗号資産の利用状況などが、グローバルから見ると分かりづらいという印象があるそうです。日本市場への評価としては、特にゲーム分野で注目されていると指摘されました。
日本のIPの強さが、グローバル展開において大きな優位性であるという認識が本セッションでも共有されました。日本市場は、日本人の国民性として企業とユーザーとの信頼関係を作りやすいこと、日本文化への評価の高さが優位性になっています。日本企業の特徴として、意思決定に時間がかかるが、決定後のコミットメントは高いとも言及されました。
一方で、日本企業はグローバルの動向へのキャッチアップ速度が遅い点が課題として挙げられました。グローバル展開のためには、情報収集と実行のスピードが必要です。そのため、グローバルで適切なパートナーシップの構築が重要になってきます。各国の特徴を理解し、自社プロジェクトとの相性を見極めることも重要です。
所感
このセッションを通じて、日本のWeb3.0市場の特殊性と、グローバル展開における課題が鮮明に浮かび上がりました。
まず、「解像度が低い」という表現が非常に印象的でした。これは、日本市場の不透明性を端的に表しており、海外プロジェクトが日本進出を躊躇する一因になっていると感じました。この課題を解決するためには、日本のWeb3.0コミュニティがより積極的に情報発信を行い、海外とのコミュニケーションを強化する必要があります。
一方で、日本のIPやゲーム分野の強さは、グローバル展開における大きなアドバンテージだと再認識しました。この強みを活かしつつ、いかにグローバルスタンダードに適応していくかが、日本企業の今後の課題になると思われます。
興味深かったのは、日本企業の意思決定の遅さと、決定後の高いコミットメントに関する指摘です。この特性は、スピードが求められるWeb3.0の世界では一見デメリットに思えますが、長期的な視点で信頼関係を築く上では強みになる可能性があります。
総じて、このセッションは日本のWeb3.0企業がグローバル展開を目指す上での課題と機会を明確に示してくれました。IPやゲームなどの強みを活かしつつ、情報収集/発信の強化や意思決定のスピードとコミットメントのバランス、適切なパートナーシップの構築など、具体的な改善点も浮き彫りになりました。今後、Web3.0における日本市場とグローバルとの繋がりには、引き続き注目していきたいと思います。
ネットワーキングから得た洞察:グローバル展開の重要性
イベント本編の閉会後は、ネットワーキングのためのサイドイベントである「ETHGlobal × AKINDO Hackers Night」に参加しました。
ここでは、Web3.0のビジネスに関わる者として、グローバル展開の重要性を再認識する機会となりました。海外からの参加者が感触としては約3割程度を占める環境で、様々な国の開発者やビジネス担当者と交流できたことは非常に貴重でした。
業界動向:大手企業の本格参入
カンファレンス中に発表された以下のニュースは、大手企業のWeb3.0への本格参入を象徴しています。
- ソニーのレイヤー2「Soneium(ソニューム)」、テストネット稼働とインキュベーションプログラムを発表
- double jump. tokyo、SBIインベストメントやソニーグループからの出資を含む1stクローズで15億円超の資金調達を実施
- SBI北尾氏、オアシスへの出資を発表──戦略的パートナーシップを締結
- HashPort と日立、生体認証技術を活用した安心・安全・便利な Web3 ウォレットの社会実装に向けた協業を開始
特にソニーのレイヤー2チェーン参入は業界に大きなインパクトを与えています。世界的な技術企業がWeb3.0に本腰を入れることで、業界全体の信頼性と認知度が高まる可能性があります。
まとめ:変革期を迎えたWeb3.0業界
Web2024を通じて、Web3.0業界が大きな変革期を迎えていることを強く実感しました。大手企業の参入、グローバル展開の加速、そして社会実装の具体化など、業界は新たなステージに入りつつあります。
今後はより多くの日本発プロジェクトが、日本市場での一般層に向けた普及の方向性と、グローバル展開との両面で躍進していく可能性を感じました。
私自身も、グローバルな視点を持ちつつ、日本の強みを活かしたプロジェクトに携わっていきたいと考えています。
執筆者:次世代デジタル基盤開発事業部 鈴木 康男